DVの定義と種類・どこからがDVと判断される?

    現在、DV(ドメスティックバイオレンス)は、深刻な社会問題であり、重大な人権侵害です。これまで、DV被害者といえば女性のイメージが定着していましたが、近年では男性が被害者になるケースも増加の傾向にあります。

    しかし、DVの加害者と被害者の関係性が親密なだけに、DVの線引きや判断が難しいとも言われています。また、DV加害者になる可能性は誰もが持っています。特別な環境や経験、学歴などの有無を問わず加害者になる可能性を秘めているのです。

    今回は、改めてDVの定義や種類とともに、「DVとは何か?」を紹介します。

    DVの定義・どこからがDVなの?

    冒頭にも述べた通り、DVの定義は曖昧な部分を含んでいます。第三者が見れば明らかに暴力だと思うことも、当人同士にとってはDVという認識がないケースもあります。

    まずは、「どこからがDVと判断されるのか?」について、その目安となる基準などを見ていきましょう。

    DVの定義1.親密な関係にある者からの暴力

    DVの一般的な定義は、配偶者やパートナーなど、親密な関係にある(あった)者からの暴力とされています。法律上の婚姻関係のみならず、事実婚や元配偶者も含まれているということですね。

    DV加害者は、DV被害者をコントロールし、自分の支配下におこうとします。やがて被害者の多くは、加害者を恐れながらも自分に原因があると思い、加害者へ抵抗することを諦める傾向があります。

    また、若い恋人同士の間で起こる暴力のことは“デートDV”と呼ばれています。スマートフォンやインターネットなどのSNSを使用した暴力です。メールやLINEの返信を強要し、通話履歴をチェックするなど、若い世代ならではの暴力も増加しています。

    DVの定義2.平手打ちや物を投げつけるのも立派なDV

    DVの定義の中で難しいのは、“何を暴力と捉えるか”という点です。親しい男女間での喧嘩は、お互いがヒートアップするにつれて「つい手が出てしまった……」というケースもあるかもしれません。

    しかし、相手の頬を平手打ちするなどは、充分に暴力行為とみなされます。「大した怪我をしていない」「痛い素振りを見せていない」というのは、判断基準になりません。相手の心も体も傷つける上、恐怖心を与えていれば、それはDVと言えるのです。

    また、手を上げることは我慢したものの、その怒りを抑えきれずに物を壁に投げつける行為なども、立派なDVです。身体的な暴力がなかった場合でも、人権侵害にかかわることがあれば、DVと言えるでしょう。

    DVの定義3.子どもを利用した暴力もDV

    DVは、夫婦やパートナー間で起こる問題です。しかし、子どもの前で暴力を振るう行為は、子どもに対しての心理的虐待であり、これもDVの一種です。幼少期にDVを目にした子どもは、精神状態が不安定になることも少なくありません。また、被害者をコントロールするための道具に子どもを利用するという悪質なケースもあります。

    DVの種類・暴力だけがDVではない

    DVには、肉体的な暴力だけでなく、精神的にダメージを与えるものも存在します。また、常に監視できるような環境を作り、DV被害者を自分の所有物のように扱うケースもあります。いったい、DVにはどのような種類が存在するのでしょうか?さっそく紹介します。

    DVの種類1.身体的暴力

    DVのイメージで最も強いのは、殴る、蹴る、叩くなどの身体的暴力です。それらの暴力は日常的に繰り返され、エスカレートしていけば「首を絞める」「高い場所から突き落とす」など、命の危険も伴うようになります。

    また、暴力によって傷を負っているのに処置をせず、病院に行かせないようにする行為もDVとみなされます。そのほかにも、実際に体を傷つける行為はないものの、「刃物を突き付けて脅す」「殴るような素振りをする」「髪の毛をつかむ」というような行為もDVです。

    DVの種類2. 精神的暴力

    “モラスハラスメント”と呼ばれるような、大きな声で怒鳴り、激しい言葉を投げつけて精神的に傷付ける行為もDVの一種です。身体的暴力とは異なり、目に見えない暴力のため、判断が難しい部分もあります。

    また、精神的暴力をおこなうDV加害者は、外の顔と内の顔を使い分ける傾向にあります。残念ながら、第三者がいる場所では、素晴らしい夫や妻、パートナーを演じています。そのため、身近な人に相談してもDV被害者の誤解と取られるケースもあるのです。

    そのような状況になると、DV被害者は自分を責め、自分自身が被害者ということに自信が持てなくなっていきます。やがて、「自分の考え過ぎかもしれない……」「こんな風に考えた自分が間違えていた」と思うようにもなるでしょう。

     DVの種類3.経済的暴力

    経済的な面を完全に支配して、DV被害者を苦しめる行為もあります。「生活費を独り占めする」「勝手に貯金を使い込む」など、その行為は悪質です。

    中には、金銭的に余裕があるにもかかわらず、お金を厳しく管理して使わせないようにするケースも!そこで、DV被害者がお金を稼ごうと仕事を始めれば、さっそく妨害します。DV被害者が自分の支配下から逃れることが、何よりも怖いのでしょう。

    DVの種類4.行動的暴力

    DV被害者の仕事や人間関係を含めた行動を阻止し、制限するような行動的暴力もあります。配偶者やパートナーの行動をすべて把握し、自分の手の届くところだけに置いておこうとする行為です。

    気が付けば、家族や友人、会社などの人間関係はすべて絶たれてしまい、DV加害者と2人だけの隔離された世界になっています。DV被害者も、最初のうちは不安と恐怖心が強いため、そこから逃げ出そうと努力するかもしれません。

    しかし、嫉妬心と独占欲から生まれるこのような行為を、加害者からの愛情と錯覚してしまうケースも多々あります。DV被害者の感覚が麻痺してしまうと、信頼できる人の言葉さえも聞けない状況になってしまうでしょう。

    DVの種類5. 性的暴力

    たとえ夫婦やカップルであっても、性行為の強要はできません。相手の合意がないまま一方的に性行為を求め、嫌がる行為をさせるなど、性的なDVはさまざまな要素を含んでいます。

    また、避妊を拒む行為、妊娠を告げた際に中絶を強要することもDVに当たります。さらに、婚姻関係を結んでいないデートDVの被害として、性行為をしている際の写真を強要するケースもあります。

    このような写真については、後からDV被害者への脅迫の材料に使用されることもあり、かなり悪質なDVと言えるでしょう。

    DV特有のサイクル

    DVには周期があり、それが何度も繰り返されるといわれています。その周期は、DV被害が長期化して拡大する要因の一つです。ここでは、どんな周期があるのかを紹介します。

    DVのサイクル1.緊張期

    最初に紹介するのは、暴力がスタートする段階でもある「緊張期」です。DV加害者は機嫌が悪くなり、DV被害者に対してその感情をぶつけるようになります。ちょっとしたことでイライラし、DV被害者のすべての行動が気に入らないと言い始めることも……。

    そのイライラは、どんどん加速していきます。加害者の表情にも変化がみられ、ピリピリとした神経質な顔をみせます。2人の間に緊張が走り、少しずつDV被害者は恐怖を感じるようになるのです。激しいDVが始まる前兆の時期と言えるでしょう。

    DVのサイクル2.爆発期

    加害者の感情が爆発し、激しい暴力を伴うのが「爆発期」です。この時期は、それまでに溜まったストレスが一気に爆発し、予測ができない暴力を振るうようになります。

    加害者自身も自分の行動を抑えることは不可能なので、大変危険な状態です。この時期にDV被害者が抵抗することで、暴力がさらにエスカレートし、生命の危険を感じることもあるでしょう。

    また、DV加害者はそんな感情を爆発させながら、自分が相手を支配していることを実感します。DV被害者にとっては、恐怖心と無力感を与えられながら、心身ともに傷ついてしまう段階です。

    DVのサイクル3.開放期

    爆発期とはまるで別人のような感情を見せるのが「開放期」です。暴力は一切振るわずに穏やかで優しい態度をとるため、別名「ハネムーン期」とも呼ばれています。しかし、残念ながら、DV被害者がこの時期に見せるのは偽りの姿です。

    DV加害者は暴力期を経たことで、すべてのストレスが発散されて心から開放された気分を味わいます。精神状態も比較的落ち着いているため、「安定期」と呼ばれることもあるでしょう。

    この時期に、DV被害者は加害者が更生したと錯覚し、自分が愛されていることを実感します。涙を流して謝罪する姿を目にすることで、DV加害者の存在を再び受け入れようとするのです。

    DVサイクルが永遠に続くワケ

    「開放期」は、DV被害者にとっては唯一の安らぎの時間かもしれません。しかし「開放期」の後半は、次の「緊張期」が始まる準備期間です。

    “それぞれの期間がどのぐらい続くのか”は、人によって異なります。中には開放期が少し長く続いたことで、加害者が更生したと勘違いしてしまう場合もあるでしょう。

    しかし、何かしらのきっかけがない限り、このサイクルは永遠に続きます。なぜならDV加害者は、すでに自分自身で感情や行動を抑えることが難しい状態になっているからです。

    ここで、DV被害者が勇気をもって第三者に相談し、自分が被害者だと声をあげない限り、状態が変わることはありません。次第にこのDV特有のサイクルは短くなり、永遠に終わりが見えない状況になる危険性が高いでしょう。

    まとめ

    DVの定義と種類、どこからがDVになるのか?という点について紹介しましたが、いかがでしたか?

    DVにはさまざまな種類があり、明らかに目に見える暴力以外にも、苦痛を伴う被害が存在することがわかりました。何よりも、DV被害者側が一方的に耐えることが、加害者の暴力行為を長期化させることにもつながります。

    まずは、DV被害者自身がその状況をしっかりと認め、現状から抜け出す勇気をもつことが重要と言えるでしょう。

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