DV防止法とは?事例や保護命令・冤罪について解説
2020.06.29
DV防止法とは、配偶者からのDVに対して、暴力を防止し、被害者を保護するための法律です。県や市によって、DV被害者の相談、自立支援などもおこなわれています。暴力や虐待をしている加害者は、他の人にはわからないようにDVをする傾向があります。そのため、被害者が声を上げなければ、助けはなかなか来ません。
この記事では、DVを受けていて悩んでいる方に向けて、DV防止法について解説します。知り合いや友達がDVを受けていて、力になってあげたい方も、ぜひ参考にしてください。
DV防止法とは
こちらでは、DV防止法の概要や時効について、詳しく解説していきます。配偶者からのDVで悩んでいる方は、まず、法律によって被害者が守られることを知りましょう。
DV防止法の概要
DV防止法は、正式には「配偶者暴力防止法」という名称です。配偶者からの暴力に対する相談や保護、自立支援の体制を整え、DV被害者を守ために定められています。
DV防止法は、女性から暴力を受けている男性被害者にも適用されます。しかし、女性の被害者が男性に比べて多いため、女性被害者により配慮された内容です。
DV防止法における配偶者の定義
DV防止法は、配偶者から暴力を受けている方を助けるための法律です。配偶者の定義として、以下の3種類が挙げられます。
- 婚姻関係にある者
- 事実婚関係にある者
- 同棲関係にある者
このように、結婚していなくても、一緒に暮している場合は「配偶者」に含まれます。そのため、同棲中にDVを受けていたことを証明できれば、同棲をやめた後でもDV防止法が適用されるでしょう。
DV防止法における暴力の定義
DV防止法が適用される暴力は、以下の3つに分類できます。
- 身体への暴力:殴る、蹴るなど、命の危険がある暴力。
- 精神への暴力:「殺してやる」など、命の危険を示す脅迫など。
- 性に関する暴力:性行為や中絶の強要など。
以上のように、DV防止法が適用されるのは、命の危機がある暴力を振るわれている場合です。つまり、配偶者からの暴力の程度によっては、DV防止法では守られないケースもあります。
DVの刑事事件の時効
DVは、暴行罪や傷害罪に当たる行為です。そのため、警察に通報、または相談することで、刑事事件として扱ってもらえます。捜査のうえ、検察官が加害者に罪があると認めると、裁判所に起訴状を提出して公訴するのです。公訴時効は、罪によって異なります。
- 「暴行罪」の公訴時効:3年
- 「傷害罪」の公訴時効:10年
DVの民事事件の時効
民事事件とは、市民の生活に関する事件です。DVの民事事件としては、DVによる損害賠償請求、離婚請求などが挙げられます。民事事件の場合、時効は民法724法により、3年間と定められています。
DV防止法が適用されると受けられる支援・保護命令
こちらでは、DV防止法が適用されると受けられる支援、規定されている保護命令などについて説明します。
DV防止法により受けられる支援
DV防止法で受けられる支援は、DV被害者のシチュエーションによって異なります。支援の内容は、主に相談・保護・自立支援の3つです。
DVについての相談
配偶者からDVを受けていることは、他人には言いにくいことですよね。しかし、紹介されるDV専門機関に所属しているスタッフは、DV被害者と接することに慣れています。そのため、自然と心を開いて、被害のことを話せるでしょう。
DVによって精神が落ち込んでいる場合は、心療内科や精神科の紹介もしてくれます。こちらは、育児や仕事のストレスで、DVをしてしまう加害者の助けにもなる支援です。
DVから逃れるために保護をお願いする
DV専門機関では、被害者を保護できる施設が用意されています。この施設は、一般には住所や電話番号を公開していないため、一定期間だけですが、加害者から逃げられる場所です。
子どもと一緒に施設で過ごすことも可能なため、小さい子どもがいる方も安心です。ただし、施設によっては、一緒に入れる子どもの年齢制限があるため、事前に確認しましょう。
DV加害者から離れるための自立支援
配偶者からDVを受けていても、経済的な理由で離れられない場合があります。そのため、DV被害者が経済的に自立する支援もおこなわれているのです。主に、就職先の紹介や職業訓練、資格取得のための費用の援助などがあります。
その他にも、母子家庭を対象にした経済的支援などもありますよ。DV専門機関にて、申し込み方法や詳細を教えてもらえます。
DV防止法で規定されている保護命令
保護命令を出してもらうためには、DV被害者が裁判所に申し立てる必要があります。命の危険がある被害者を一定の期間守る制度なので、その間に配偶者から逃げましょう。保護命令は4種類です。
- 被害者への接近禁止命令
- 被害者と同居する住居からの退去命令
- 被害者の子どもや親族への接近禁止命令
- 被害者への電話など禁止命令
このように、保護命令によって、加害者が被害者に近づくことが禁止されます。もし、命令に違反すれば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
DV防止法が適用された事例
こちらでは、DV防止法を定める国の行政機関、男女共同参画局に寄せられた、実際にあった暴力について紹介します。身体への暴力、精神への暴力、性的な暴力の3つに分けて、それぞれ見ていきましょう。
身体へのDVの事例
身体への暴力を受けると、特に命の危険を感じるでしょう。突発的に暴力が悪化することもあり、注意が必要です。
身体に対するDV事例:30代女性
夫から、髪の毛を引っ張り、引きずり回された。そのまま動けなくなり、警察を呼ぶこともできなかった。外にまで引きずり出され、死を感じた。
精神へのDVの事例
精神に対する暴力は、長期間にわたって繰り返される傾向があります。うつ病などの精神疾患を引き起こすことがあり、実際の暴力から解放されても、被害に悩み続けるかもしれません。
精神に対するDV事例:50代女性
経歴や実家のこと、仕事のことを悪く言い、被害者の欠点について説教をした。子どもも含めて、言葉の暴力を長時間続けた。それは一度だけでなく、頻繁におこなわれた。
性に関するDVの事例
性への暴力は、女性が被害者となるケースが目立ちます。夫婦や恋人関係の相手であれば、相手が嫌がっていても性行為が許されると、勘違いをしている加害者が多いのです。被害者も夫婦だからと、性行為を強要されると従ってしまう方が多いでしょう。
性的なDVの事例:20代女性
性行為を強要された。避妊をしてくれないため、ピルを内服していたが、妊娠してしまった。「産みたい」と言ったら、被害者のお腹をたたき「堕ろせ」と言われた。その後、子どもを堕ろした後、すぐに性行為を強要された。
事例参考:男女共同参画局ホームページ
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/02_1.html
DV防止法が適用されるために必要な証拠
DV防止法を適用させるために、配偶者からDVを受けている証拠を残しておくことは重要です。こちらでは、DVの証拠となるものを紹介します。
DV被害の状況を記載したメモや日記
DVを受けた際の被害状況を記載したメモや日記は、被害者によって書かれたものでも、重要な証拠になります。DVを受けた日時や理由など、詳しく記しておいてください。また、何度もDVがあった場合、警察などにすぐ相談しなかった理由も書いておきましょう。
DVによって受けた傷の写真
DVによって受けた傷の写真は、DVの状況を記載したメモと一緒に用意しましょう。スマートフォンやカメラで撮影し、加害者に見つからない場所に隠しておいてください。
DVによってできた傷の診断書
医者の診断書は、DV被害を示す重要な証拠です。DVによって大きなケガをしたり、精神が落ち込んで心療内科を受診したりした場合は、診断書などをきちんと残しておきましょう。ケガや精神疾患の程度が軽くても、証拠を残すために診断書をもらうことをおすすめします。
DV防止法で冤罪はある?
DV防止法により、多くの被害者が救われているなか、冤罪も発生しています。こちらでは、DV防止法の冤罪について説明します。
DVの冤罪が起こる理由
DVの冤罪は、思い込みや悪意によって起こります。特に、女性の発言は、DVにおいて大きな力があります。例えば、妻が夫からの暴力をDV専門機関に相談すると、証拠が不十分でも、DV被害者だと認められるケースがあるのです。
DV冤罪を防ぐために気をつけること
DVを受けていたことは、被害者のメモや日記でも証明できるため、証拠を捏造しやすいと言えます。夫婦仲が悪く、相手が離婚を意識しているようなら注意しましょう。慰謝料を目的に、DV冤罪に巻き込まれる恐れがあります。
DV冤罪を防ぐ方法として、日記を記し、自分が何をしていたのか確認できるように残しておく方法があります。この方法で、捏造された証拠を出された際、反論ができるかもしれません。
また、配偶者から、身に覚えのないDVで訴えられた場合、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
DV防止法の概要、支援内容にについて紹介しました。家族や恋人間で起こるDVは、被害者が行動しなければ解決できない問題です。今回紹介したDV防止法によって、被害者は守られています。そのため、怖いかとは思いますが、勇気をもってDV専門機関に相談しましょう。
また、DV防止法の認知が広がるとともに、冤罪による被害も発生しています。DV冤罪に巻き込まれないためにも、DV防止法について知っておくことは大切です。