DVシェルターとは?入れる条件や実態を解説
2020.06.15
もし、あなたが配偶者やパートナーから日常的に暴力を受け、逃げ場を失ってしまった場合、どうしたらよいのでしょうか?その選択肢のひとつが、ここ数年でよく耳にするようになったDVシェルターの利用です。
シェルターは“避難場所”という意味をもちますが、「どんな環境か?」「入居する上での条件は?」など、意外とわからないことが多いでしょう。なぜなら、細かい情報をオープンにすることで、DV加害者がDV被害者を見つけ出してしまう可能性があるからです。
今回は、DVシェルターがどんな場所なのかについて、入居する際の条件や注意点などもご紹介します。
※現在DVシェルターを利用している方には、大きな影響がないように配慮してお伝えいたします。
DVシェルターはどんな場所?
DVシェルターは、どのような場所なのでしょうか?また、入居する期間には何か制限があるのでしょうか?まずは、その基本情報から見てきましょう。
DVシェルターは安全な緊急避難場所
DVシェルターとは、DV加害者から逃げるための避難場所として一時的に提供される場です。本人だけでなく、その子どもも同じ環境に身をおくことが可能となります。
何よりもDV被害者やその子どもが、安全な生活を確保することが最優先です。少しでも身の危険を感じたら、事件に発展する前に警察はもちろん、都道府県が設置する婦人相談所や民間シェルターに相談しましょう。
DVシェルターは一時的な保護施設
DVシェルルターを利用するうえで知っておくべきなのは、あくまでも一時的に保護される場所ということです。基本的には入居期間が2週間程度であることが多いので、その間に新しい住居や仕事、学校などを探す必要があります。
DVは日常的に繰り返されるので、まずはDV加害者から離れることが必須です。DVシェルターは、そのための緊急避難場所という認識です。
公的なDVシェルターと民間のDVシェルターがある
DVシェルターには、行政が運営するシェルターと民間が運営するシェルターの2種類があり、子どもがいる場合には一緒に保護を受けられます。
公的なシェルターは、各都道府県に設置された一時保護所です。民間のシェルターは、被害者を保護するだけでなく、DV被害者への相談対応や仕事探しのサポートなど、さまざまな支援があるのが特徴です。
民間のシェルターを運営する団体数は、都道府県、政令指定都市が把握しているだけで122件(令和元年11現在)。冒頭でも触れましたが、被害者の安全を最優先としているため、その所在地は非公開とされています。
DVシェルターには生活必需品が揃っている
DVシェルターには、生活する上で最低限必要となる物はすべてあるので、そのあたりの心配をする必要はありません。
入所することが決まったら、簡単な衣類のほか、お財布と携帯、通帳、実印と保険証など自分の身分が証明できるものを忘れずに持参しましょう。
あまりにも多くの荷物を持参すると、DV加害者に家を出ることが分かってしまいます。家の中で目に付く物や大きな物は、そのまま残していきましょう。とにかく必要最低限で小さな荷物にするということが大切ですね。
DVシェルターに入れる条件
DVシェルターの基本について知ったところで、次はDVシェルターに入れる条件を見ていきましょう。
DVシェルターに入れる条件1.日常的に身体的な暴力を受けている
一口にDVといっても、殴る蹴るなどの暴行を受ける身体的DVだけではありません。高圧的な態度を取り、馬鹿にするような言葉を浴びせる精神的DVや、金銭の支援をせずに支配をするような経済的DVなども存在します。
その中で、DVシェルターへ入れる条件は、生命や身体への危険があることです。精神的なDVや経済的なDVでは、明確な被害者としての提示ができず、緊急性が認められにくいケースがあります。もちろん、身体に影響があることに変わりはないので、まずは必要な機関に相談してみましょう。
DVシェルターに入れる条件2.DVシェルターが必要だと説明できる
DV被害者の特徴として、自らが耐えることを選んでしまう傾向があります。そのため、生命や身体への危険が及ぶまで、我慢を続けてしまうのでしょう。
だからこそDVシェルターに助けを求める際は、DV加害者から受けている暴力について、しっかりと相談する相手へ伝えることが重要です。自らの言葉で説明することはもちろん、DVの被害が分かる写真や病院の診断書などがあると伝わりやすくなります。
DVシェルターに入れる条件3.勤務先や学校を変更できる
DVシェルターの利用する理由はDV加害者から身を守ることなので、これまでの環境を大きく変えることが必須です。
たとえ一時的にDV加害者の暴力が収まったとしても、またいつ同じような状況になるかはわかりません。むしろ、家を出たことに対して怒りが増し、暴力が激しくなる危険性もあります。そのため、新たな環境へ身をおくことが最善策となるのです。
慣れ親しんだ環境を離れることには、不安もあるでしょう。しかし、DV加害者に居場所を特定されないためには、必要なことなのです。
DVシェルターの注意点・問題点
DVシェルターに入居できた際、気になるのはシェルターでの生活における注意点や問題点です。たとえ短い期間であったとしても、どんな生活が待ち受けているかを把握しておくことは大切です。さっそく見ていきましょう。
DVシェルターの注意点・問題点1.狭い・暗い・寒いなど住環境の問題がある
すべてのDVシェルターに共通している点ではありませんが、入居施設内が快適だとは言い切れません。
あくまでも一時的な避難場所であるため、中には低い天井の部屋や、狭く暗い空間の中で過ごさなければならないこともあるようです。室内の温度調整なども含め、心地よさが得られないことは覚悟しておくべきです。
もちろん、食事においても同様です。旅館やホテルに宿泊している訳ではないので、健康的でおいしい食事は期待しない方がよいかもしれません。開放的で心からリラックスできる空間などは求めない方がよいでしょう。
DVシェルターの注意点・問題点2.入居者同士のトラブルがある
同じDVシェルター内には、ほかのDV被害者も入居しています。もちろん、情報漏洩を防ぐため、ほかの入居者に自分のことを話すのは禁止されています。しかし、中には自分自身の被害について一方的に話す入居者や、事情を執拗に聞いてくる入居者もいるようです。
DV被害者同士、気持ちが通じ合う部分もあるかもしれません。苦しみを分かち合うことで、寂しさがまぎれることもあるかとは思いますが、情報が洩れてしまうリスクを考えて、個人情報は自分でしっかりと守りましょう。
また、食事や入浴、掃除などにおいてルールを守れない入居者同士では、トラブルになることも……。ストレスが溜まりやすい環境の中、感情的になりやすい面もあるので、人との接し方については、いつも以上に気を配ることが求められます。
何か問題が発生したら、大きな事件へと発展する前に施設内のスタッフや担当者へ相談するように心がけましょう。
DVシェルターの注意点・問題点3.スタッフが不足している
DVシェルターには、公的機関と民間のシェルターがありますが、運営体制や対応するスタッフの数はさまざまです。また、NPO法人や社会福祉法人などの法人格を持っているところもありますが、法人格を持たない運営形態を取っているところもあります。
中には、明らかにスタッフ数が不足しており、施設内の環境悪化に繋がってしまっているケースもあります。また、自分が困っている時や必要な時にスタッフへの相談がスムーズにおこなえず、後回しになってしまう場合もゼロではないようです。
DVが社会問題となっている現在、人手不足によって一定の環境が保たれないという点は、大きな課題と言えるでしょう。
DVシェルターの注意点・問題点4.一時的避難のため根本解決にならない
冒頭でも述べた通り、DVシェルターは一時的な避難場所です。あくまでもDV加害者から身を隠し、新しい住まいや勤務先、学校などの手配をするための空間ということを改めて理解しておきましょう。
つまり、DVシェルターに入ったことだけでは、根本解決にはなっていないのです。気の緩みは危険を招くこともあるので、注意が必要です。
DVシェルターの注意点・問題点5.携帯電話の解約を求められるケースがある
DVシェルター内で最も重要なのは、外部との接触を避けるということです。「DV加害者にさえ居場所が特定されなければよい」という考えはやめましょう。なぜなら、実家にいる家族や親しい友人などから、何らかの形で情報が洩れてしまうケースもあるからです。
そのようなことから、入居と同時にスマートフォンや携帯電話を回収され、時には解約を求められることもあるでしょう。GPSで位置情報が見つかってしまう恐れもあるので、安全を優先するためには仕方がありません。
閉鎖的な空間に身を置きながら、孤独を感じてしまことも多いでしょう。つい、親しい友人や家族の声を聞きたくなるかもしれませんが、それがきっかけでDV加害者に居場所を追跡されてしまうという恐ろしいケースもあるのです。
この期間は何よりも生命や身体の安全を一番に考え、我慢して日々を過ごしていくことが大切です。
まとめ
今回はDVシェルターについて紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
DVシェルターが特定されることは、DV被害者の安全を守ることに反します。そのため、細かい点まではご紹介できませんでしたが、大まかな環境や入居する上での条件やルール、問題点などについては、ご理解いただけたでしょうか。
DVの被害を受けている方には、何よりも安全を優先して、これらの施設を利用しながら新たな一歩を踏み出してほしいですね。