芍薬(シャクヤク)の花言葉は?意味・由来・誕生花・特徴など。ボタンとの違いも解説
2021.05.17
“立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿はゆりの花”でご存知の芍薬(シャクヤク)は、香りよい大ぶりの花が魅力ですね。
名前の由来も花言葉も薬としての効果も、どれも美しい女性を連想させるものばかりで、世界中で広く愛されています。今回は、ギリシャ神話にも登場するほど古くからある芍薬をご紹介します。
美しさの代名詞芍薬(シャクヤク)はどんな花?
芍薬は有名なことわざにもあるように、美しい女性を例えた言葉で使われます。しかし、肝心の花そのものをよく分かっていない人も多いのではないでしょうか?ここで、詳しく説明していきたいと思います。
芍薬について
春になると大きな花を咲かせるシャクヤクを一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
芍薬はボタン科ボタン属の花で、4月~6月頃に花の見ごろを迎えます。高さは60センチほどと決して高くはありませんが、こぶし大くらいの大きい花を咲かせます。
芍薬と一口に言っても、その色や形は様々で、赤、ピンク、白、黄、紫など色のバリエーションが豊富で、花びらも一重咲き、八重咲と種類が豊富です。一般的に花屋さんでは、少し咲き掛けたつぼみの状態でお花を売ります。
しかし、芍薬の場合、つぼみが完全に閉じている状態で店頭に並びます。これは、芍薬のつぼみが少しずつ開いていく様子もまた美しく、その変化も楽しめることから、少しでも長く楽しめるようにこのような売られ方になったそうです。
この販売方法は、芍薬を育てている農家さんにとっては出荷の判断が難しいのだそうです。ちょうどよいタイミングで出荷をしないと、つぼみのままで開かないまま終わってしまったり、逆に出荷時点で開いてしまったりして、商品価値がなくなってしまうのだそうです。
農家さんの努力のおかげで、私たちは芍薬の花を手軽に楽しめているのです。
芍薬とボタンの違い
芍薬によく似た花に牡丹(ボタン)があります。どちらも春先に咲き、大きな花をつけます。芍薬も牡丹も同じボタン科の植物なので似ていて当然ですが、いくつか異なる点があります。
そもそも芍薬は草で、牡丹は木(樹)です。
“立てば芍薬、座れば牡丹……”とはよく言ったもので、芍薬はまっすぐ伸びた茎の上に花をつけ、牡丹は横に伸びた枝に花をつけます。それぞれの花のつき方を女性の姿に当てはめた、うまい例えなのです。
ただ単に、花の美しさと女性の美しさを掛けてほめているだけではないところに、昔の人の表現力のすごさを感じませんか?
花の大きさは芍薬の方が一回り小さくなっています。牡丹の方が若干大きく重厚感のある花を咲かせます。花が咲くのは芍薬の方が遅く、牡丹が終わるころに芍薬が咲いていきます。
また芍薬は『薔薇のような香り』と例えられます。香水やスキンケアで定評のあるロクシタンでは、この芍薬=ピオニーの香りの製品を販売しています。薔薇よりもさわやかな香りでとても人気があるシリーズです。
さらに、花が散るときにもその違いが見られます。牡丹は「崩れる」と表現されるように花びらがパラパラと落ちていきますが、芍薬は花そのものが根本からぼとっと落ちます。
誕生花としての芍薬
誕生花とは、生まれた月や日にちなんだ花のことを指します。その花の旬の時期や色々な神話に基づいているなど、様々な理由や背景から定められています。自分のシンボルフラワーとして知っておくことで、より花との素敵な接し方を楽しめるようになります。
その中でも芍薬は、5月の誕生花です。芍薬は丁度5月頃に旬を迎え、春爛漫のその時期には街のお花屋さんにも色とりどりの芍薬が並びます。種類も豊富に展開されることで、ギフトとしての選び甲斐がある時期だとも言えますね。もちろんテーブルプラントとしても楽しめます。
芍薬と同じく5月の誕生花となっている花は、鈴蘭、クレマチス、アヤメ、ヒメウツギなど。どれも春の旬である花であると共に、これから訪れる夏の爽やかさも感じさせる花であることが特徴です。
お花屋さんに並ぶのは4~5月がピークですが、開花期は5月~6月がピークとされているので、丁度これらの花と最も綺麗な時期を楽しめます。5月の誕生花である芍薬が枯れ落ちる頃に、ようやく夏本番がやってくるというところでしょう。
世界でも、日本でも愛される芍薬
日本では平安時代より前に薬草として伝わってきて、その後観賞用として広がっていきました。中国では宋の時代からやはり薬草として、育てられていました。ヨーロッパには18世紀前半に伝わり、主にイギリスやフランスで広がり品種改良がすすんでいったそうです。
このように古くから世界に広がっている芍薬ですが、“東洋の芍薬”と“西洋の芍薬”では違いがあります。
■東洋の芍薬…茎一本にいくつかの花がつきます。その中でも、日本のものは一重咲きのものが多く、「ジャパニーズタイプ」と呼ばれています。
■西洋の芍薬…茎一本に花が一輪咲きます。
ちなみに、日本ではかつて熊本で武士の素養として園芸が奨励されていました。菊や朝顔にならんで芍薬も育てられており、門外不出の花とされ大切にされていました。現在ではその系統の品種を「肥後芍薬」と呼んで、珍重されています。
芍薬の名前の由来は?
ここでは、芍薬の名前の由来について解説していきます。中国から薬草として日本に入ってきた時には、現在とは違う表記だったのだとか。その歴史から西洋での意味まで、知れば知るほど面白いですよ。
中国では芍薬は違う漢字だった?
日本では『芍薬』と書きますが、これは、中国から薬草として入ってきたことに由来しています。中国では昔、芍薬のことを『綽約(しゃくやく)』と書いていたのですが、この読みをそのまま使ったのが日本名になりました。
中国での意味は“優しげでしなやかな花の様子”を表しています。実は日本の『芍薬』という漢字の意味も、この中国の意味に由来しています。“芍”には美しい、輝くような、という意味があるので、カンタンに言えば“綺麗な薬草”ということになります。
読みも意味も中国から伝わったということです。別の呼び方で、牡丹を花王というのに対し、芍薬は花の宰相「花相」とも言います。
学名のPaeoniaの由来は神話から
学名のPaeoniaという名前はギリシャ神話に基づいています。それは医療の神様パイエオンが女神レトの出産の際に、芍薬で陣痛の痛みを軽減させたというものです。
この功績を最高神ゼウスに認められるのですが、パイエオンの師である別の神様が嫉妬して、なんとパイエオンを殺してしまいます。
女神レトはパイエオンの死を悲しみ、パイエオンを芍薬に生まれ変わらせたと言うことです。そこから、芍薬は女性特有の病気に効くようになったとも言われています。
ちなみにフランスでは「聖母のバラ」、イタリアやスペインでは「山のバラ」と呼ばれて愛されています。
芍薬の花言葉は、不思議な花の特性から
芍薬の花言葉はには、なんとも可愛らしい女性らしさや、上品で可憐なイメージのものばかりです。具体的な意味や由来などを解説していきます。
なぜ“恥じらい”という花言葉がついたの?
芍薬の花言葉は『恥じらい』 『謙遜』 『はにかみ』です。いかにも女性らしい花言葉ですね。それぞれの花言葉の由来をご紹介いたします。
まずは『恥じらい』『謙遜』についてお話します。
これは芍薬のある特性からきた花言葉です。芍薬は、日中は大きく花開くのですが、暗くなってくるとその花を閉じてしまいます。昼には元気でも夜には恥ずかしがって出てこない、そんな奥ゆかしい女性をイメージさせるところからこの花言葉がつきました。
ちなみに、英語でも恥ずかしがっている様子を「blush like a peony(芍薬のように顔を赤らめる)」という風に表現します。
もう一つの花言葉の『はにかみ』ですが、これはいくつか説があります。
一つは、イギリス民話で、はにかみ屋の妖精が芍薬の花に隠れたところ、芍薬も一緒に赤くなったというもの。もう一つは、「ピオニア」という名前の妖精を神さまが大変可愛がっていたところ、嫉妬した女神に魔法をかけられ芍薬に姿を変えられてしまったというものです。
色別に見る芍薬の花言葉の意味
花言葉は、その色によって意味を変えるのは珍しいことではありません。芍薬の花言葉も同じで、色ごとに違った意味がありますのでご紹介しますね。
まずは可愛らしいピンクの芍薬の花言葉は「はにかみ」。確かにピンクの芍薬は、そのチャーミングな微笑みを赤く染めたようなシャイな印象も受けます。照れて顔を伏せたような面影からもピッタリな花言葉だと言えるでしょう。
そして白の芍薬の花言葉は「幸せな結婚」。なんとも幸福感に満ち溢れた花言葉ですよね。ウエディングの予定が決まっている友達へのフラワーギフトとしてまさに最適!純白のウエディングドレス姿も想像させる存在感があります。
赤い芍薬の花言葉は「誠実」。美しさの中にも気品と気高さを忘れない芍薬、こちらもピッタリな花言葉です。凛とした咲き姿には、真っ直ぐに前を見据える心の強さと誠実な意思が感じられます。ピンクや白のふんわりした魅力とは、まだ違った美しさですよね。
最後に紫の芍薬の花言葉は「怒り」「憤怒」。ピンク、白、赤と違ってネガティブな印象が強い花言葉になります。紫の芍薬はミステリアスで崇高な雰囲気があり美しいですが、贈り物に選ぶ際には注意をするべきでしょう。見た目だけの印象で選んで顰蹙を買わないようにしたいですね!
外国では神話が、日本では伝説が残る
このように、諸外国では花の由来も花言葉も、神話に基づいていることが多いようです。芍薬の場合も、神に愛されて、それゆえ嫉妬されたことが由来となっていますね。神をも魅了するくらいに美しい花として愛されてきたことがよく分かります。
ちなみに、日本では世界三代美女の一人、小野小町が愛した花として知られています。「百夜通い伝説」にはそんな小野小町と求愛してきた男性との関係が描かれていますが、その中で重要な役割を果たすのがこの芍薬です。
なんとも悲しい話ですが、絶世の美女である小野小町と美しい芍薬のイメージが重なる伝説です。
芍薬と似た花言葉を持つ花は?
「恥じらい」「慎ましさ」「誠実」「幸せな結婚」といった意味を持つ芍薬。そして一部の色では「怒り」「憤怒」という意味も持ちます。
似ている花言葉を持つ花として挙げられるのはまず、同じく「恥じらい」という花言葉を持つ牡丹。そう、「座れば牡丹」ですから、芍薬と並ぶことわざとして選ばれたのでしょうか?
次に、芍薬の花言葉の「慎ましさ」なのですが、似たような反言葉を持つのはミセバヤ。ミセバヤも同じく「慎ましさ」という意味を持ちます。
またスミレにも「つつしみ深さ」という花言葉があります。また、ピンクのツバキにも「慎み深い」という意味があり、黄色いパンジーにも「慎ましい幸せ」、フクシアにも「慎ましい愛」という花言葉があります。
まるで、遠くから愛する人をそっと思い続ける日本の女性のようですね。
そして芍薬は「誠実」という意味も持ちますが、同じ花言葉の花はスミレ、桔梗、烏瓜などが挙げられます。スミレは、芍薬と同じ花言葉を2つ持ちますね。
芍薬はプレゼントに向いている?手入れ方法は?
ここでは、芍薬はプレゼントに向いているのか?またもらった際の手入れ方法を紹介していきます。花のプレゼントで悩んだ時やもらった時など、ぜひ参考にしてくださいね。
プレゼントには向いている
結論から言えば、ネガティブな意味を持つ紫の芍薬さえ選ばなければ、プレゼントには向いています(花言葉を気にせず、紫色が好きという人には紫の芍薬でもいいのではないでしょうか?)。
近年では、母の日に「カーネーションじゃありふれているから」と芍薬をプレゼントする人も増えてきているようです。
最盛期が5~6月ということで、ちょうど母の日シーズンに一番きれいな状態でプレゼントできますね。
結婚式にもおすすめ
結婚式にも喜ばれる芍薬。「夫婦を固い絆で結ぶ」とされ、ブライダルブーケとしても人気です。丸くて大きな花はテーブルでも映え、和装式にも洋風の結婚式にも両方合うことが強みです。
美しい女性を表現する花言葉にもあるように、しとやかで凛とした立ち振る舞いの花嫁の姿を表すようで、縁起もいいですね。
手入れの方法は?
芍薬は日当たりの良い場所を好み、乾燥に弱いです。乾燥を防ぐために小まめな水やりが必要です。地植えの場合は水やりの必要はないのですが、夏場などの乾燥が気になる日は水をやるようにしましょう。
デリケートな花なので、鉢植えの場合は雨や風が強い日には軒下に移動させてあげましょう。また、西日がさえぎられる場所だとなおよいです。
まとめ
美しく、香り高く、美人にたとえられる芍薬は、「愛される花」として世界中で大切にされています。
それでいて、花言葉にあるように恥じらいの姿もみられ、それがより一層魅力を引き立てています。
見た目や香りで癒し、薬として体を健康に導いてくれる芍薬は、女性の美しさを守ってくれる役目を果たしてくれます。神に愛される女性になるように、また「立てば芍薬……」と言われるような魅力あふれる女性になりたいものですね。