すっかり聞き慣れた「女子会」ということばですが、その始まりは７～８年ほど前と言われています。テレビや新聞でも次第に取り上げられるようになり、2010年には新語・流行語大賞を受賞しました。今では、多くのレストランや居酒屋が「女子会メニュー」を取り入れ、社会的にも定着したような印象があります。

けれども、この「女子会」が本当は苦手という女性が実は今、かなり増えているようです。ネットでそういう意見をつぶやくと、「私も…」と共感する人が次々に集まってきます。そんな「女子会苦手女」の生態と世渡り術にスポットをあててみました。

１．「合わせ笑顔」がとにかく疲れる

女子会の一つの楽しさは、気のおけない同性の友だちと「ここだけの話」で盛り上がれることです。ふだんは建前で話してしまうけれど、本当はこう思っているということを表に出せることはとても開放感があり、共感できれば安心できます。
けれども、本音を話していても、共感できないことが重なれば逆に気づまりで不安にもなります。女子会には「楽しむために行く」という大前提があるので、自分も空気を読んで、その場の雰囲気に合わせてしまうことが多いと思います。これは楽しいどころか、とても大きなストレスの種になります。

「感情労働者」とも呼ばれている接客業や医療関係の人たちは、どのような相手であっても笑顔で対応するのが基本ですが、その無理が心身によくない影響を及ぼすことが問題になっています。本当はそう思っていないのに、あたかも積極的に賛成しているかのようにふるまうということは、自分で自分を否定していることと同じです。そこで「それは違うよ」「私はこう思う」と言えればストレスにはなりませんが、その場の雰囲気は「空気が読めない奴」と思われて重くなってしまうでしょう。

男性の飲み会を見ていると、延々と異論を戦わせていることがあります。女性から見るとよくけんかにならないなと思うのですが、あまりそのようなこともありません。どちらかと言えば、集まりで男性は議論を楽しみ、女性は共感を求める傾向が強いようです。

楽しめればよいのですが、共感「しなければならない」となると苦痛になります。自分と同じ境遇や感性の人たちとは気持ちも近くなりますが、差があると考え方や感じ方に共感できないことがある方が自然です。それなのに共感している振りをする「合わせ笑顔」につくづく疲れてしまった…という「女子会苦手女」は少なくありません。

２.「ネガティブスパイラル」に落ち込む

女子会のもう一つのダークサイドは「ネガティブスパイラル」です。話題がいつも明るいことばかりならよいのですが、本音の話はしばしば悪口や批判の大合唱にもなりがちです。「ここだけの話」という免罪符がつい口を軽くしてしまいます。そして困ったことに、悪口話はまた面白く、盛り上がるため、切り上げ時を失って延々と続きかねません。鬱憤を晴らしてすっきりできればいいのですが、必ずしもそうではないようです。

心の悩みを聞くカウンセリングでは、ストレスを抱えた人が負の感情を思いきって表に出すことは大切だと考えられています。カウンセラーはそれをただ受け止め、肯定も否定もしません。もしカウンセラーが否定をすれば、ストレスは中にこもったままになり、肯定をすればストレスに栄養を与えて成長させてしまいます。たまっていた思いを出し尽くしたあとに、自然と自分で答えが見つかるというのがカウンセリングの基本です。

悪口や批判で際限なく盛り上がる状況は、お互いに負の感情に燃料を投下しあっているようなものです。昂揚感で一瞬ストレスが解消したように感じますが、実はもっと大きなものに育っています。悪口が悪口を呼び、ストレスがかえって増える「ネガティブスパイラル」も「女子会苦手女」の秘かな悩みです。

３．「女子会苦手女」の世渡り術

「合わせ笑顔」で表情もこわばり、「ネガティブスパイラル」で気持ちも沈む…そんな思いをするくらいなら、いっそのこと女子会には誘われても参加しないと決めている人もいます。たまに会うくらいの知り合いならそれでもさしつかえありませんが、会社の同僚や先輩・後輩のつながりや、ママ友のつきあいはそう簡単にはカットアウトすることはできません。そこで「女子会苦手女」がたどりつく世渡り術の一つは、「客先に誘われた飲み会だと思え」ということだそうです。

客先に誘われて毎回断るのも角が立つけれど、毎回お呼びに応えているときりがありません。だいたい人は２回誘って２回とも断られると、もう相手を誘わなくなることが多いのだとか。それでは関係が切れてしまいます。踏み込まず踏み込まれずの適当な距離を保つためには、半分は理由をつけて婉曲に断り、半分くらいは顔を出す。席に行ったら、徹底的に心に仮面を被り、できるだけ相手に合わせるが、調子には乗らない。そういう営業ウーマン的な世渡り術を女子会に応用しているのだそうです。

まとめ

気心の知れた友だちですら、全ての感性が自分と同じということはありません。もし女子会の無言のお約束で、いつも皆で盛り上がってうなずき合わなければならないという雰囲気があれば、参加するのもだんだんおっくうになるでしょう。とはいえ、完全に距離を置くのも自分が居づらくなりそうであれば、いっそ割り切り、自分が社会生活を営むための一種の必要経費だと考えて参加することも「女子会苦手女」の気持ちを楽にできるかもしれません。

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